REASON WHY FILM
フィルムで撮影する理由
フィルムで写真を撮ることで得られるもの。
フィルム撮影は、枚数に限りがあり、撮影結果をその場で見ることができず、写真が出来上がって届くまで時間もかかり、どんな仕上がりになっているかも分からない。
でも、それは逆に考えると、首を長く長〜くして待つ間に、
家族や自分自身がどんな風に写っているのかをあれこれイメージする時間、
撮影の時に肉眼を通して感じた光景をたぐり寄せて振り返る時間を持てるということ。
それは、効率とスピードが優先される今の時代にとって、かえって、贅沢な時間と言えるのではないでしょうか。
フィルムで撮影するメリットって?
まずは、お客様の立場で考えてみました。
◆枚数が限られているため、程よい緊張が生まれ、撮影そのものに集中し臨むことができる。
◆その場ですぐに写真を見られないため、出来上がる写真が届くまで、ワクワクドキドキ。
◆写真の出来上がりを、あれこれ想像。家族との会話もきっと増えるはず。
◆撮影の時に見た光景、家族の笑い声、繋いだ手の温もりなどが、心の中に、より鮮明に刻まれる感じがする。きっと。
◆写真といえばフィルムが当たり前だった当時の人たちと同じ気持ちを共有でき、写真の歴史を体感できる。等々。
フィルムで撮影するメリットって?
今度は、撮影者の立場で考えてみました。
◆枚数が限られているため、撮影の集中度が増す。その結果、良い表情を捉えやすく、写真の質の向上が見込める。
◆「この一矢に定むべし」と強い覚悟のもと、撮影を進めることができる。
◆撮影時間そのものを短くコンパクトにでき、被写体への負担が少なく済む。
◆デジタルのようにその場で撮影結果を確認できないゆえ、常に肉眼で被写体の機微に注意を払うことができる。
そして、被写体の放つ光がそのまま真空パックされたような描写で、どことなく柔らかい写りで、言葉にうまく表せられないけど、そんな感じで好きです。
もちろん、デメリットもあります。
◆その場で仕上がりを確認することが難しい。
◆デジタルに比べて、コストや手間がかかる。
◆デジタルカメラの確実性、即時性、正確性には敵わない。
◆フィルム及び現像用品は化学製品であるため、製造ミスや品質のバラツキなどトラブルが稀に起こる可能性がある。
◆フィルムを装填する時のミスでフィルムに傷がついたり、フィルム未装填のまま撮影してしまうということが起きないともいえない。
◆デジタルで利用する際には、データ化する必要がある。等々。
それでもフィルムで撮りたいと思う理由は・・・
2018年6月、初めてモノクロフィルムの現像を自分の手でやりました。
その当時、薬液の温度管理や手順などかなりアバウトだったため、出来上がったネガはざらつき、褒められたものではありませんでした。
だけど、そのネガには、今は亡きばあちゃんの優しい表情がしっかり写っています。
デジタルカメラのメリットを享受しながらも、僕がフィルムで撮り続けたい理由。
それは、「今、ここに」という一瞬にとどまる機会を与えてくれるから。その瞬間、生(せい)を感じさせてくれるから。
明確な理由はうまく言葉で表現できませんが、きっとそういうことなのかもしれません。
「どうか写っていてください」と心から祈る、そんな気持ち。
フィルム撮影の長所と短所、それは、撮影してから写真を見られるまでに時間がかかるという点。
被写体は、一体どんな風に撮影されたのか、写真が手元に届くまで分からない。
それゆえ、「写真が出来上がる楽しみ」という「お土産」を持ち帰るような気持ちに。僕自身も、敬慕する写真家にフィルムカメラで撮影してもらった時にそんな風に感じました。
撮影者は、シャッターボタンを押した瞬間を見ているので、仕上がりをある程度は予想できているが、結果はフィルムを現像するまで分からない。
撮影者として、間違いなく素敵な瞬間を写せたと思うが、果たして本当に写ってくれているだろうか。しばらく期待と不安の狭間に漂う日々。
だからこそ、シャッターボタンを押すときに、「どうか写っていてください」と心から祈る、そんな気持ちです。
こんなフィルム写真体験、楽しそうだと思いませんか?
花と手紙 フカヤケンイチ 2024年5月31日
