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撮影にまつわることから日常のことまで、徒然と。

写真の力

「花と手紙だより」2024年5月3日版

先日、妻方の親戚のYおばあさん宅を訪ねたときの話。

コロナ禍もあって、約4年振りに再会したのですが、以前と変わらず、元気で話し声も大きく、米寿とは思えないほどパワフルでお喋りが好きなYおばあさん。

残念なことに一昨年、ご主人のKおじいさんが旅立ってしまわれて、今はひとりで暮らしているのですが、居間や仏間にはKおじいさんや子、孫たち家族の写真が所狭しと飾れていて、とても賑やか。

田舎のおばあさんあるあるで、僕の祖母も例に洩れずそうだったのですが、野菜や果物、お菓子やジュースを必ずと言っていいほどお土産にくれるのですが、Yおばあさんも訪れると必ず、オロナミンCかリポビタンDを出してくれます。

仏間で手を合わせた後、Yおばあさんは妻と僕に、Kおじいさんとの思い出話を中心に色々と話を聞かせてくれたのですが、「あなたが撮ってくれたとうちゃんの写真を毎朝眺めていて、本当に良い写真だよ」「庭にやってくる野良猫ととうちゃんは一緒にいつも散歩していたけど、懐かしい」とKおじいさんを懐かしむような表情。

それは8年前に、まだKおじいさんが健在だった頃、僕が撮った写真。KおじいさんとYおばあさんの2ショットや、庭にやってくる野良猫と戯れるKおじいさんの姿をスナップしたもの。確かに僕もその写真を気に入っていて、一時期ウェブサイトのトップページ写真の一部にそっと忍ばせていました。

その時は僕が直感で衝動的にご夫婦を撮らせてもらいたいと思っただけで、深い意図はそこまで持ち合わせていなかったわけだけど、こうして8年後にYおばあさんがあの時の写真を毎朝眺めてくれているなんて。後で妻に聞いた話によると、テーブルの上に小さなアルバムが置いてあって、こんな風に毎朝眺めていると言って再現してくれたそう。

改めて、写真の持つ力を思い知りました。


「花と手紙だより」2024年5月3日版