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撮影にまつわることから日常のことまで、徒然と。

絶対に無駄じゃないねん。

「花と手紙だより」2024年6月21日版

「花と手紙だより」2024年6月21日版

「花と手紙だより」2024年6月21日版

心が先か、身体が先か、その両方かもしれませんが、 人間の心って全身と直結していて、五感で感じて生まれる喜怒哀楽のちょっとした変化で、見える世界、感じる世界が変わるものだと思います。

僕は不惑の年齢になったにもかかわらず、本当に小さなことでクヨクヨしたり右往左往することがよくあるので、先人たちが残してくれた勇気を与えてくれる言葉や背中を押してくれる言葉、元気にしてくれる言葉を、ノートに書き止めて、僕というポンコツなハードウェアを動かすための良質なソフトウェアをせっせと拾い集めています。

僕は又吉直樹著「火花」が好きで、原作本ももちろん面白いですが、それ以上にこの物語の世界観を余すことなく映像化されたNETFLIX制作のドラマを擦り切れるほど何度も繰り返しDVDで観ています。

そして、主題歌のOKAMOTO'S「BROTHER」も最高です。

「火花」は、若手芸人の徳永と先輩芸人の神谷との十年間を描いた作品です。
徳永を林遣都さんが、神谷を波岡一喜さんが演じられ、もう、おふたりともに徳永と神谷にしか見えません。

あらすじとしては、物語終盤、徳永は自身のコンビ「スパークス」の解散を決意します。
解散ライブの後、行きつけの飲み屋でふたりだけの打ち上げの場面での神谷から徳永への言葉が、胸を打ちます。

その言葉は、人が生きていくことの残酷さをこれでもかというほど突きつけ、そして、人が生きていくことの素晴らしさをこれでもかというほど肯定してくれて、思わず目が潤んできてしまいます。

二十代前半から約十年間追い求めた道に終止符を打ち、新しい道へ進むことにした僕自身を慰め、奮い立たせてくれるために用意されたもののように感じます。

ドラマを観ながらこの言葉を初めて聞いた時、ドライでシビアな世界で思うような結果を出せず情けなく負い目を感じている自分のことを「よく頑張った」「無意味じゃなかったんだよ」「少なからず誰かのために役立ったんだよ」と慰めてくれている気がして、救われる思いがしました。何かの折にこの言葉を思い出すたび、「よし、頑張ろう、やってやろう、楽しもう」と思わせてくれる、僕の好きな言葉のひとつです。





神谷『徳永、俺なぁ、芸人には引退なんてないと思うねん。

もし、世界に漫才師が自分だけやったら、こんなにも頑張ったかなぁ?と思う時あんねん。

周りにすごい奴らがいっぱいおったから、そいつらがやってないこととか、そいつらの続きとかを、俺たちは考えてこれたわけやろ。

ほなら、もう、共同作業みたいなもんや。』

徳永『・・・ですね。その中で売れる人間と売れへん人間は、明確に分かれますよね。』

神谷『この壮大な大会には勝ち負けがちゃんとある。

だから、面白いねん。

でもな、徳永。

淘汰された奴らの存在って、絶対に無駄じゃないねん。

一回でも舞台に立った奴は、絶対に必要やってん。

これからの全ての漫才に、俺たちは関わってねん。』








「花と手紙だより」2024年6月21日版