100年前にカワセミを撮った男
下村兼史氏は、1920年代から戦後にかけて、日本における野鳥を中心とした生物写真の先駆者であり、そして、日本最初の野鳥生態写真家と呼べる人物です。
写真技術が発展した現代から見れば、かなり心許ない機材と携帯するにも苦労するほどの大きな装備にもかかわらず、学術的にも芸術的にも素晴らしい野鳥の写真を撮影。
野鳥をはじめ自然への敬意と、絶対に写すんだという情熱があってこその素晴らしい写真ばかり。
同じ機材で同氏のような作品を撮影できる人は、当時も現在もいないと思えてしまうほど、奇跡と言ってもいいくらいの作品です。
いや、奇跡なんて軽はずみに言ったら本人に叱られてしまいそうです。弛まない努力と揺るぎない信念の賜物なのだと思います。
写真を生業にする僕にとって目を見張る内容ばかりで、何度読み返しても為になります。
被写体に真摯に向き合い、己にできる最善を尽くす。当然ですが、これしか上達の手段はないようです。
「花と手紙だより」2024年11月15日